味の染みて深みのない大根ほど美味しくないものはない。

おでん



おでんといえば大根だよね。

僕が中学生のときに遠征でサッカーに出かけていたとき、帰り道にあるファミマでよくおでんを買って食べていた。

僕が買うのは絶対に大根だった。寒い冬に、当時お金のなかった僕にとって、70円で暖かいものが食べられるなんて最高だった。

さらにファミマはカップに具材を自分で入れられるから、好きなだけ汁を入れられるのも嬉しかった。大根しか買わないのにつゆだくにして入れて、寒空の下で試合後の仲間とチャリンコに跨りながら一緒に食べてた。これがうめーんだわ。

でも、たまにあるんだよね。味の染みてない大根が。

おでん

大根はおでんの汁がしっかり染み込んでないと美味しくはならない。入れてから最低でも30分。十分染みわたるまで1時間はかけないといけない。

さらに大根は透明になっただけだと、十分に味が染みたとも限らないのだ。ただ熱が通っているだけで、まだまだ苦い可能性もある。

でも最初は見た目からは判断できず、かじった瞬間に初めてまずい大根だと気づくこともあった。口にして初めて、自分の選んだ大根がハズレだったことに気づくのだ。

宮川 輝
うわぁ…にっがーい…。

そう、美味しい大根って出来上がるまでに時間がかかるのだ。

 

だけどもう僕は味の染みてない大根は選ばない。なぜなら苦い大根を何回も選んできたことで、味のしっかり染みた大根を見分けることができるようになったし、さらにもっと美味しい大根を見つけることもできるようになったのだ。

その条件は、”他の具材の出汁”までしっかり染み込んでいることだ。

おでん

ちくわ、つくね、たまご、ソーセージ巻き…。

いろんな素材の味が染み込んだ大根は、ふつうの大根より格別に美味しくなる。

別になくても十分美味しいのだが、他の具材と一緒に煮詰められた大根には、ふつうのだし汁からは出ない”深みのある味”がするのだ。

 

今日作ったおでんはほぼ完璧にできた。他の具材の味もしっかり染みている。

おでん
宮川 輝
うまい。

さすがコンビニのおでんでいつも大根しか頼まなかっただけあって、大根の調理法は心得ている。

久々の味に思わず感動した。マジで最高だった。

だけど、あと30分煮詰めたらもっともっと美味しくなる気がする。まだまだ大根の力を引き出せそうな予感がした。

その為には”大根以外に何を入れるか”がカギのような気がしてるが、今の僕にはその素材が思い浮かばない。

このままでもいい気がする…が、違うのだ。口に入れた瞬間、大根が俺に「モット深ミヲ出サンカイ!」と囁いてくるのだ。

僕にはもっと、この大根に深みを持たせることができるのかもしれない。

そう思ったら、また大根を煮詰めたくなった。「これいじょう美味しい大根ってどんなもんだ?」と興味が湧いてくる。

年を越したらまた大根を煮詰めてみよう。

もしかしたら失敗して、ゲロマズな大根ができるかもしれないが、僕は絶対に大根を煮詰めることをやめない。

どんなに美味しい出汁があったって、俺は時間をかけて、ゆっくり弱火で大根を煮詰めてやるのだ。

だって、味の染みてない大根ほど美味しくないものはないからね。