「ジョン・ウーデン;勝利と成功の違い」を観た感想。【TED】

「ジョン・ウーデン;勝利と成功の違い」を観た感想。【TED】



なんて素晴らしいトークなんだ。

 

僕はスポーツが好きだけれど、勝ち負けにこだわるのは好きじゃない。

小学2年生で始めた水泳も、タイムアタックで競争するようになってから楽しめなくなった。

小学3年生で始めたサッカーも、中学からガチンコ勝負の世界になって楽しめなかった。

そして大人になると、社会では勝利することや成功することが「素晴らしい人間・生き方」と評価されることに気が付いたけれど、僕はその価値観に馴染むことはできなかった。

なぜか。

 

それは成功するため・勝つためになにが必要かを考えればよく分かる。

必要なのは類稀なる努力だろうか。高い目標設定だろうか。それとも物事をやり抜き通す、強いメンタリティーだろうか。

いや、違う。勝つ為に絶対的に必要なのは、敗者だ。

勝ち負けだとか、成功だとか失敗だとかは、相手がいてこそ成り立つ。

僕が勝つ為には、成功する為には、敗者という“負け組”を生み出さなくてはいけない。

だから彼のように、勝ち負けの世界に身を置きながら、成功や失敗を超越した「深い視点を持った人間」に、僕はとても憧れるようになった。

人よりも上に立とうとしてはいけない。

彼のトークで一番印象に残ったのが、彼が子供時代に父親から言われたという「人の上に立とうとはしてはいけない」という言葉だった。それをバスケの監督時代に、生徒たちに強く指導していたという。

「ジョン・ウーデン;勝利と成功の違い」を観た感想。【TED】

勝負の世界では「勝ち負けにこだわることが素晴らしい」とされているが、一体何のために戦っているのかをよく心得ている人間というのは、非常に少ない。

僕は小さい頃からサッカーをしてきたが、監督からは「相手の嫌がることをしろ。」と言われてきた。もちろん、その方が勝てるからだ。

そしてどんな手段を使っても「勝たなきゃ意味がない。」と指導されてきた。今も同じような環境で過ごしている子供達は、非常に多いのではないだろうか。

だがこれからの時代、相手の嫌がることを良しとする人間は世界で通用しない。それでも勝利できるかもしれない、成功できるかもしれない、人の上に立つことができるかもしれない。

だがそんな人間に僕は魅力を感じない。勝利に貪欲な人—成功に執われている人—人の上に立とうとする人間に、僕はついていこうとは思わない。

「ジョン・ウーデン;勝利と成功の違い」を観た感想。【TED】

当時の監督には怒られるかもしれないが、僕はサッカーをやっていて1度も「絶対に勝ちたい!」と思ったことがない(笑)。

競うのは楽しいけど、競争するのは昔から嫌いなんだ。

 

日本の社会では「タメ口」「敬語」「尊敬語」と相手に応じて言葉を使い分けるように、上下関係には厳しい社会だ。その文化は今でも深く根付いている。

もちろん僕らには社会生活を送るために与えられた役割がある。従業員、会社員、社長など、その役割をこなすのは、当たり前のことだ。

しかし、人より立場が上だからといって、あなたが誰かより優れているワケではない。また、人より立場が下だからといって、あなたは人より劣っているワケではない。

人には違う能力がそれぞれあり、その能力に応じて社会の役割を果たしているだけだ。

 

勝ち負けよりも深い視点でスポーツと向き合える彼のような人間が、この世界にはもっと必要だ。

取り留めのない、価値のある話。

彼は自分でも「取り留めのない話だったかな?」と心配するぐらい話の内容はバラバラで、分かりやすい言葉でまとめることが出来ていなかったが、それでも彼の話す姿から感じことはたくさんあった。

「ジョン・ウーデン;勝利と成功の違い」を観た感想。【TED】

彼から滲み出ているのはスポーツ指導者としての威厳でも、プライドでも、高い品格でもない。彼が持っているものは“深み”だ。

だが深さは目には目えないから、人よりも優れているという表現ができない。

だからこそ、価値があるのだ。

 

そして彼の姿を見ていると、昔の人は「自分の気持ちを相手に伝えるのが本当に難しかったんだろうな」ということにも気が付いた。

僕もこうしてブログで自分の考えを表現しているけれど、はやりまだまだ伝えきれない部分がたくさんある。読み取り手によっては誤解を与えることがあるかもしれない。

だが、本当の価値は目に見える形で現れないと僕は思っている。

どんなに素晴らしい言葉で語ろうとも、右だといえば左が生まれる。上だといえば下が生まれる。勝利したからには、敗者が生まれる。

だからこそ、目には見えない深さが必要なのだ。

取り留めはないかもしれないが—話にまとまりがないかもしれないが—分かりにくいかもしれないが、深みのある人間にだけ、その価値を見極めることができる。

 

イチロー選手はインタビューでこんな言葉を残した。

今の僕にとっては目に見えない部分がかなり多くの部分を占めているので。

目に見えるところにあれば、それほど難しくはないですよ。
見えないから難しいんです。

彼が多くの国民から慕われ尊敬されている理由は、偉大な記録を残したことだけではない。

彼もまた、深みのある人間だからだ。

勝利でも成功でもない価値観を。

スポーツの世界であれビジネスの世界であれ、僕たちは勝つためや成功するために生きていると言えるかもしれないが、勝利や成功ではないものにこそ本質的な価値を置ける人間でありたいと僕は思っている。

「ジョン・ウーデン;勝利と成功の違い」を観た感想。【TED】

これは「勝負の世界がダメなんだ。」とか、「成功することが悪いんだ。」という話ではない。もっと深さを持って生きるための、先人による知恵だ。

この深さを見つけるために、今の勝負や成功にこだわる世界があるとしたら、それも悪くはないのかもしれない。

僕はたとえ勝負の世界、成功や失敗の世界に身を置いたとしても、そこに執われない、彼のような人間であり続けたい。

 

…やっぱり、僕は社会の価値観とは、違うところで生きてゆきたい。